「3次元化は目的ではなく、設計効率を高める手段」―アジア航測株式会社が実践する、3次元設計による設計最適化と大幅な業務効率化の裏側―
BIM/CIM活用業務においては、「3Dモデルを作成すること自体が目的化してしまっている。」という課題をよく耳にします。このような中でアジア航測株式会社では、V-nasClairシリーズ(KUSSAKU_Kit、i-ConCIM_Kit、SABO_Kit、ROAD_Kit等)を駆使し、「設計の質を高め、実務を効率化する」ためのツールとしてBIM/CIMを活用しています。
今回、同社の設計担当者の方々に、実務にどのような変化が起きたのか、その手応えを詳しく伺いました。
1.導入背景と課題:単純作業に奪われていた体力と時間
かつて、設計現場では、製図に関わる膨大な「手作業」が設計者の肩に重くのしかかっていました。
例えば、砂防堰堤や道路設計における土工影響範囲を平面図に展開する作業では、ペーパーロケーションでいくつもの断面を切り出し、その一つひとつに土工形状を書き込んでから平面に展開をしていました。この作業は、単純作業の繰り返しですが、根気強く何日間も作業することとなるため、体力や集中力を要する作業でした。そのため、製図作業が集中する時期はヒューマンエラーのリスクも常につきまとっていました。
また、近年のBIM/CIM積算で必要となる「工事工種体系ツリーコード(属性情報)」の入力も、設計者を悩ませる要因でした。「Excel形式で整理されている膨大なコードから該当するコードを探し出し、一つひとつの3次元モデルにコピー&ペーストで属性を付与していく作業は、手間と時間がかかるだけでなく、ミスをした際には問題箇所を発見するだけでも一苦労でした。」
「設計の本質は、より良い構造を検討することにあります。しかし、こうした製図やデータ入力という『作業』に時間を奪われていました。」
2.実業務での活用:現場で発注者を驚かせた「即時性」
こうした課題を解決したのが、V-nasClairシリーズの各「Kit」でした。
即時シミュレーションが合意形成を変える
予備設計段階において、堰堤の配置検討に「KUSSAKU_Kit」が威力を発揮しました。「堰堤を配置した際、掘削範囲が既存の道路にまで及ばないか。それをモデル上で迅速に確認できるようになりました。」と本間氏は語ります。かつて2~3日かかっていた製図時間が、今ではわずか30分ほどで完了します。このスピードは、発注者との打ち合わせのあり方さえも変えました。「打ち合わせの場でモデルを動かし、『ここを少しずらしたらどうなるか』という要望にその場で応える。すると発注者から『こんなに簡単に、すぐに見られるのか』と驚きと信頼の声をいただくことが増えました。」
【KUSSAKU_Kitの画面(例)】
「ROAD_Kit」によるルート検討の革新
急峻な地形での管理道路設計では、「ROAD_Kit」が活躍しています。設計条件を入力するだけで、切土・盛土の範囲が自動算出され、土量バランスの検討もスムーズに行えるようになりました。「以前は1か月近くかかっていたルート検討から数量算出までの作業が、今では3日程度で完了する事例もあります。」と、その効果を強調します。
コード入力エラーを限りなく少なくする「i-ConCIM_Kit」
属性情報の付与についても、「i-ConCIM_Kit」の導入により、コピー&ペーストの繰り返しから解放されました。「このツールを使えば、属性情報がプルダウン形式で選択可能で、該当の工種を選択することで、工事工種体系ツリーコードが自動入力される仕組みになっています。以前はコピー&ペーストしていた作業から解放されるため、コード選択時のヒューマンエラーは限りなく少なくなり、設計者の精神的な負担も大幅に軽減されました。」と、確かな品質向上への手応えを明かしてくれました。
【製品導入Befor/After 比較表】
Before | After | |
KUSSAKU_Kit | 製図作業に2~3日 かかる | 即時シミュレーションの活用により、 30分に短縮 |
ROAD_Kit | ルート検討~数量算出まで、 約1か月 かかる | 土量算出が自動化され、 3日程度で完了 |
iConCIM_Kit | 属性情報のコピー&ペーストの繰り返し | 自動入力により、人的ミス削減 |
3.導入後の効果 :
自動化ツールによる作業時間の短縮は、単なる時短以上の価値をもたらしています。
ツールによって作業が効率化されたことで、設計者自らがモデルを操作し、その場で最適解を導き出せるようになりました。
実務を担う川﨑氏は「作業が自動化された分、私たちは『より安全で、より施工しやすい形状は何か』という設計本来の検討に時間を割けるようになりました。これは、設計の品質向上に直結しています。」と語っていました。
4.今後の期待:詳細設計から施工へのシームレスな連携へ
今後の展望について、現場からはさらなる進化を求める声も上がっています。
現在は主に予備・概略設計で大きな成果を上げていますが、「詳細設計で求められる細かな設定なども自動化がさらに進めば、活用範囲はより一層広がります」と、さらなる機能拡張への期待を語ります。
また、設計段階で構築した精緻な3Dモデルを、ICT施工など現場側のデータとしてそのまま引き継いでいく仕組みづくりも視野に入れています。「設計と施工が3Dデータでシームレスにつながることで、建設業界全体の生産性がさらに向上していくはずです。」
5.ユーザーコメント
「V-nasClairシリーズの強みは、何より実務に直結している点です。別々のソフトを立ち上げることなく、一つのプラットフォーム上で砂防堰堤や道路のモデル作成だけでなく、土工モデルの作成や、BIM/CIMモデルの属性付与まで完結できる一連の操作性は大きな時間短縮につながっています。開発サイドと直接意見を交わし、現場のニーズについて検討してもらえる距離の近さも、このツールを使い続ける理由になっています。」