事例紹介《産学官連携》実務を学べる「施工BIM/CIM研修」 

はじめに

2018年5月に発足したICT東北推進協議会(愛称「i-Academy 恋地」)は、秋田県五城目町の小学校跡地(通称「BABAME BASE(ババメベース)」)を拠点に、建設DXによって生産性の向上と担い手育成を推進し、建設産業の発展による地域の活性化を目指す、産学官の連携組織です。

建物外観

研修拠点「i-Academy 恋地」

民間主導で動き出した組織は、遊休施設であった五城目町恋地スキー場の活用や交流人口増加などによる地域活性化を望む五城目町と、建設DXを推進したい秋田県の協力を得て、とことん”現場主義”な一気通貫の施工体験型研修カリキュラムの開発をしました。

2019年、その活動が評価され、国土交通省主催の「令和元年度 i-Construction大賞」において優秀賞を受賞しています。

2021年、あらたなカリキュラムとして『V-nasClair(ヴィーナスクレア)シリーズ』を利用した「施工BIM/CIM総合研修」を実施するなど、産学官連携によるICT東北推進協議会の特色ある活動に、全国からますます注目が高まっています。

今回は、本組織の設立メンバーであり研修実施主体として事業の中核を担う株式会社スリーアイバードの校長兼国立秋田高専名誉教授 伊藤 驍 氏、講師を務める石井昭浩氏、同じく設立メンバーである一般社団法人秋田県建設業協会の渡辺雅人専務理事にお話を伺いました。

株式会社スリーアイバード 校長・代表取締役 工学博士 伊藤 驍 氏

個人写真

1966年東北大学大学院工学研究科修士課程修了、同土木工学科勤務,カリフォルニア大学(バークレイ校)留学後、国立秋田高専勤務(秋田大学兼任講師),2004年名誉教授。日本雪氷学会副会長、日本地すべり学会理事、日本雪工学会副会長等歴任,現在日本雪工学会名誉会員、JICA帰国専門家秋田県連絡会会長、インドネシア国立科学研究所客員教授。専門は防災工学。

株式会社スリーアイバード Dアカデミー東北講師 石井 昭浩 氏


「建設ICT総合研修」や「施工BIM/CIM総合研修」にて、カリキュラムの構築から研修の実施までを担当し、技術者の育成やBIM/CIM、i-Constructionの推進に携わっています。(写真は、施工BIM/CIM総合研修のテキスト表紙と講習内容)

一般社団法人 秋田県建設業協会 専務理事 渡辺 雅人 氏

個人写真

平成23年に一般社団法人化。建設業関係の関連会社の発展が主な事業で、国や自治体に向けた事業予算確保と、少子高齢化に合わせた人材確保や生産性の向上のための環境整備、また、災害や降雪などの非常時に、市民・県民の安心安全を守るための活動をしています。

ICT東北推進協議会について

―― ICT東北推進協議会の目的について教えてください。

伊藤氏
ICT東北推進協議会の目的は、建設業界のDX活用に関する教育の場を提供することによって、技術者の育成・生産性の向上とともに、地域の活性化と建設産業の発展に資することです。

研修実施図

図-1 全国から建設技術者を呼び込む"ICT研修の聖地"五城目町

―― 産学官連携による強みを教えてください。

伊藤氏
産学官それぞれの立場で、それぞれの課題がありました。
《産》は、建設産業人口の低下に伴い、i-Construction の建設ICTに対応した技術者の育成が急務です。
《学》は、これから社会へ出る学生たちには基礎的な知識が必要であるとともに、積極的に先端技術を取り入れた学びの機会が必要です。
《官》は主導する立場として、建設業界のDX化をますます推進する必要があります。
これらの課題について一体となって取組み、足並みをそろえることで、知識の底上げができ、日本の建設技術が高まっていくことが産学官連携による強みです。

―― ICT東北推進協議会が発足した経緯について教えてください。

石井氏
協議会発足の前に、秋田県主催で建設産業のICTに関わる地場産業を集めて座談会が開催されました。ドローンスクール【Dアカデミー東北】を運営していたスリーアイバードをはじめ、JCMA東北などが参加し、秋田県で建設ICTの取り組みについて検討されたのですが、その座談会で施工体験型の一気通貫した研修カリキュラムについて協力して開発しないか、と提案したのがきっかけです。
提案当初、結成メンバーのJCMA東北は正直消極的な姿勢でした。実は一度は協力を断わられています(笑)。

―― JCMA東北は、どうして当初消極的な姿勢だったのでしょうか?

石井氏
Dアカデミー東北の提案は、3次元測量から3次元設計、そして施工、出来形管理、電子納品までを一気通貫して経験できるカリキュラムで、施工フェーズでは実際にICT建機の操作も実地研修しよう、というものでした。しかし、実際の現場では建機の操作は重機オペレーターが行いますので、JCMAとしては現場の管理技術者がそこまで実技体験する必要はないだろう、という考えだったようです。
しかし、このままでは現場の内製化が進まない、などのジレンマがあり、作業の効率化を現場で考えるには、やはり実際に体験してみるべきだろう、という風に思いが変わり、実務型の研修実施に賛同いただけました。

―― なるほど、そのような経緯で《産》《官》が連携する組織が発足したのですね。 ほどなく《学》として国立秋田高専が参入されていますね。

伊藤氏
秋田高専で土木・建築系専攻する学生のうち、約30%が女子生徒となっており、性別問わず活躍できる建設ICTの技術者の担い手としても期待されています。また、デジタルネイティブ世代の生徒たちはCADや設計計算ソフトなど、普段からICTには慣れ親しんでいます。
協議会に参入してからは、授業の一環としてこちらの施設にきてもらって現場でドローンや重機を動かす体験学習プログラムを実施するほか、学校へ座学の講師を派遣するなどの活動をしています。
学校ではこのような体験をすることはできないので、毎年高専の学生たちから好評ですよ。

個人写真

―― ICT東北推進協議会主催の「建設ICT総合研修」について教えてください。 こちらはどのような研修なのでしょうか?

石井氏
2017年当時、秋田県建設業協会の荒川英俊専務理事(当時)より業務委託を受けて、3日間の建設ICT研修を2回実施することになりました。一からカリキュラムを練って構築し、試行研修を行って、そこからさらに2か月カリキュラムの改善を行いました。
これを母体としてできたのが「建設ICT総合研修」で、何よりの特長は「モデル工事を施工する体験型実習を主体とした「施工経験連動型研修」であることです。着工から完成までを一貫した流れに沿って技術を習得することができるほか、UAVでは空中写真測量を主体としながらも空中レーザー測量の体験も実施しています。図-2は施工経験連動型研修のイメージですが、それまで一般的には、第1段階、少しすすんでも第2段階でしたが、本研修は第3段階となっています。

渡辺氏
当時から協会では高校生を対象にした現場見学会を実施していたのですが、ドローンやICT建機、CAD技術等を取り入れた先端技術は若年層からの反応もよく、人材確保の観点からも参集しております。

施工経験連動型研修のイメージ

図-2 施工経験連動型研修のイメージ

「施工BIM/CIM総合研修」について

―― 2021年4月からはじまった「施工BIM/CIM総合研修」について教えてください。
この研修を開始した経緯は?

渡辺氏
きっかけは2020年の4月頃の事です。Dアカデミー講師兼事務局でもある石井さんから「今後、施工現場でも3次元CADの活用が必要になってくると思うが、良いソフトベンダーを知らないか?」という問合せが当協会に入った事がきっかけと聞いています。当時専務理事だった荒川氏は川田テクノシステムが開発・販売する「V-nasClair」という3次元CADが東北地方整備局でも導入されている事を知っていましたし、一部の協会会員も導入済、という情報も得ていましたので、川田テクノシステムを紹介したようです。

石井氏
その通りです。建設現場で3次元CADを活用しなければBIM/CIMモデルのサイクルは回りませんし、ICT施工にも3次元データを活用するわけですから、BIM/CIMモデルを利活用する為の道具、すなわち3次元CADを使った講習を行う必要がある、と考えた事が発端です。

――具体的には、どのような研修なのでしょうか?

石井氏
「施工BIM/CIM総合研修」は、建設ICT総合研修と同様のモデル工事を想定した体験型実習を主体として、施工段階におけるBIM/CIMでの実務を学べるようなカリキュラムになっています。
『V-nasClairシリーズ』を使用し、点群データの活用から3Dモデル作成、構造物の干渉、工程計画における施工ステップ検討、及び納品といった一貫した流れに沿って技術の習得ができるようになっています。
BIM/CIMとICT施工の共通部分を融合させることを含んだカリキュラムで、ICT活用工事における3次元設計データ作成についても学ぶことができるのが特長です。勿論、研修用テキストも一から作成しましたので。

ハンズオン研修の様子

ハンズオン研修の様子

―― BIM/CIMは施工よりも業務委託のほうが進んでいる印象が強いですが、将来を見据えて「施工BIM/CIM」としたところが大きな特徴ですね。

―― 具体的な反響などはいかがでしたか?

渡辺氏
ICT東北推進協議会主催の研修案内などは毎回協会員へ周知していますが、実際には他県からの申込みも多数あり、非常に盛況であると聞いています。BIM/CIMと聞くと確かに設計業務委託での活用、と思いこんでしまう部分もありますが、国交省のスケジュールによればR5年度からは工事での適用も始まりますので、会員企業も気にしていると思っていました。

伊藤氏
2021年4月から1年間に4回実施しましたが、初回はキャンセル待ちがでるほどの盛況ぶりで、BIM/CIMへの意識の高まりをはっきりと感じましたね。
私たちは研修のフィードバックとして受講者アンケートを毎回分析し、アンケート検証会を開いているのですが、「参考になった」という回答率が高いのもこの研修の特長だと思います。

石井氏
テキストは、第1回から数えてすでに3回バージョンアップしています。アンケートを検証することにより、研修を重ねるごとに実務習得により役立つ内容に改善しています。
また、i-Construction・BIM/CIMについては毎年のように制度や取組みが更新されています。それに合わせて講義内容も、継続してブラッシュアップしていかなければならないと考えています。

―― 確かにBIM/CIMの基準類は毎年のように改定されていますから、講習テキストの改定も必要ですね。
研修ではMR体験もできると聞きましたが、どのような体験なのでしょうか?

伊藤氏
この研修では現場へ出かけることはないのですが、ドローンを使って現場を確認したり、実際にMicrosoftのホロレンズ(実機)を一人一人に装着してもらってMRを通した疑似体験をすることができたりと、将来的な施工BIM/CIMの活用構想を感じてもらえるような内容になっていることもぜひ注目していただきたいですね。

ホロレンズやドローンを利用した疑似体験の様子

「今後の展望」について

―― 最後に、「ICT東北推進協議会」の今後の展望などありましたらお聞かせください。

伊藤氏
研修拠点「i-Academy 恋地」は、国内でも随一の建設業に特化した施工経験連動型のICT研修施設となっています。
建設DXによるハイテクノロジーが、地域産業の活性化や、人材育成・担い手育成といった課題解決には必要不可欠です。
産学官連携での活動やノウハウを全国にも広め、国内全体の建設DXによる業界の底上げに寄与していきたいと考えています。

渡辺氏
秋田県でもICT活用を推進している中で、人材の確保は大きな課題です。経験を積んだベテラン技術者の引退も増えている中で、このような研修を通じてICT技術の活用方法を学ぶことによって、特定の経験がなくても工事が進められる可能性が出てきましたし、業界のイメージアップという点でもメリットは大きいと考えています。IT技術やICT活用は誰から見てもかっこ良いものですし、学生や若手技術者がやってみたい、と思える業界にしてゆきたいですね。

―― 伊藤校長、石井様、渡辺様 貴重なお話を本当にありがとうございました。(記 KTS)

お問合せ

資料請求・購入前のお問合せ

お気軽に、お近くの営業所までご連絡ください。

製品購入後のお問合せ(サポート)

製品サポートに関しての詳細はこちらの表からご確認ください。

関連製品・サービス

建設系CAD「V-nas」シリーズ

「V-nas」シリーズの詳細はこちら ≫

「V-nasClairでi-Con用の土工モデルが簡単に作れます」

V-nasClairでICT建機用の3次元モデルを作るには・・・詳細はこちら ≫
  • 本ページに記載されている会社名および製品名は、各社の商標または登録商標です。
  • 本ページに記載の仕様は、改良のため予告なく変更することがあります。
TOP戻るボタン TOP戻るボタン